ふたりのイーダ その2
2005年 07月 20日
この作品は松谷みよ子さん原作「ふたりのイーダ」を演劇で表現したものである。
ファンタジー独特の世界が広がり、観客の想像力を引き立てるような設定になっている。そして、この原作が、児童文学では珍しく「原爆」を描いていることも特筆されることだ。
私はかなり前にこの原作を読んで、椅子が動いて話すということから、不思議な気分になり、なぜか忘れられない一冊になっていた。
今回、原作を読み返すこともなくいきなり演劇という形で「原爆」に出会ってみて、改めて考えさせられることの多い作品だなあと思った。
広島の近くの花浦というところで繰り広げられる、直樹というおにいちゃんとイーダと呼ばれている妹が夏休みに経験したこと。それは不思議な椅子のある荒れ果てた家で、りつ子という女性を介して触れた原爆の事実。荒れ果てた家に住んでいた人々が原爆で亡くなったということも知っていく。ずっと昔に落ちた原爆の後遺症に苦しむりつ子を見て、原爆の悲惨さを知って愕然とする直樹。
そのことを児童演劇で表現しようとするのだから、どんな風になっていくのか、少しの心配も入って観ていたが、脚本の良さからか、台詞の面白さで子どもをひきつけようとしているのが分かるし、難しい問題が決して難しくなく我々に提示されているところが凄い!劇団仲間にしては、大道具は簡素な作りで、それだけに役者の演技力が光った。
生と死、それから「時」という概念も含んで、根源的なテーマを大人にも提示していて、一緒に観劇している我々には心に重く残る作品だった。今回は小学4年生以上を対象に観劇したが、場内は静かで全員がこの劇に強く惹き付けられたことを感じた。
観終わった後の静けさ…。我々一人ひとりの心の中にぐさりと突き刺してくるラストシーン。涙と共に原爆の悲惨さをずどんと心の底に投げ込まれたような、そんな感覚を覚えた劇だった。
by kotori-7864
| 2005-07-20 22:25
| 演劇